パーソナルジムの料金を相場だけ見て決めると、会員が増えてもお金が残らないことがあります。
開業1年目の私がそうでした。
私が運営しているのはピラティススタジオですが、マンツーマンの枠を売るという構造はパーソナルジムと同じです。
この記事では、2026年時点の料金相場と、経費と稼働の上限から単価を逆算する手順を、私の実際の数字で書きます。
開業時の料金設定と、1年半後の通帳
2019年に開業したとき、プライベートレッスンの料金を1回6,500円にしました。
勤務していたスタジオが1回8,800円。
独立したばかりで名前も知られていないのだから、安くしないと選ばれないと思ったんです。
決め方も雑でした。
「勤務先の3割引なら来てくれるだろう」。
根拠はそれだけです。
結果だけ書くと、会員さんは増えました。
1年半で30人を少し超えて、平日の夕方の枠はだいたい埋まるようになりました。
それなのに、月末に通帳を見ても数字がほとんど増えていません。
家賃18万円とマシンの割賦を払うと、手元に残るのは勤務時代の給料より少ない額でした。
レッスン本数は勤務時代に近づいているのに、です。
帳簿を見て分かったのは単純なことでした。
単価が安いと、枠が埋まっても必要な売上に届きません。
埋まっているのに苦しい。
安売りの怖さはここにあります。
パーソナルジムの料金相場(2026年時点で調べた範囲)
この記事を書くにあたって、パーソナルジムの料金を調べ直しました。
| プラン | 相場の目安 |
|---|---|
| 都度払い | 1回7,000〜15,000円 |
| 月4回コース | 月2〜5万円 |
| 2ヶ月16回の集中コース | 総額20万円前後 |
| 入会金 | 2万円前後 |
比較サイトや各ジムの料金ページを見て回った範囲の数字です。
きれいな統計がある世界ではないので、幅のある目安として見てください。
ピラティスのプライベートレッスンも、都内なら1回8,000〜12,000円くらいの価格が多い印象です。
で、この表を眺めていると気づきます。
幅が広すぎるんです。
都度払いだけ見ても、7,000円と15,000円では倍以上違います。
「相場に合わせる」と言っても、この幅のどこに置くかは結局自分で決めるしかありません。
だから相場は、料金を決める道具ではありません。
決めた料金が、お客さまに説明のつく範囲に収まっているかを最後に確認する道具です。
私はこの順番を逆にして失敗しました。
もうひとつ、開業してから知ったことがあります。
体験レッスンに来た方には、ほかのスタジオやジムと比較したかを軽く聞くようにしています。
きちんと料金表を並べて比べてから来る方は、体感で半分もいません。
家から通えるか、続けられそうか、指導者と合いそうか。
選ぶ理由はだいたいこの順番で、価格が一番に来る方は思ったより少ないです。
「安くしないと選ばれない」は、開業前の私の思い込みでした。
利益から逆算する料金の決め方
値上げを決めたときにやった計算を、そのまま書きます。
毎月出ていくお金の洗い出し
まず、売上がゼロでも出ていくお金を全部足しました。
私の場合はこうです。
- 家賃 18万円
- マシンの割賦 3万円
- 予約システム・通信費・水道光熱費 4万円
- 消耗品・雑費 3万円
合計で月28万円。
ここに自分の生活費と貯蓄ぶんの30万円を足すと、毎月58万円の売上が必要という計算になります。
税金と国民年金・国民健康保険は、この30万円の中で見ています。
このあたりの細かい扱いは人によって違うので、私は税理士さんに確認しました。
自分の取り分を「余ったら」にしないでください。
開業1年目の私は自分の取り分を固定費に入れておらず、帳簿を見ても苦しさの原因がすぐには分かりませんでした。
自分が持てるレッスン数の上限
次に、月に何本のレッスンを持てるかを数えました。
私は勤務時代、多いときで週22レッスンを担当して、声が出なくなったことがあります。
体で知っている上限です。
ひとり運営は掃除も予約管理もSNSも自分でやるので、レッスンに使えるのは週18本が現実的な線でした。
月にすると70本ちょっとです。
ただ、枠は全部は埋まりません。
体調不良のキャンセルも出ます。
なので「埋まるのは8割ちょっと」とみて、月60本で計算しました。
ちなみに週18本は、平日の夕方以降と土曜の午前にかたまります。
平日の昼間は、思うほど埋まりません。
ここを「毎時間埋まる前提」で読み違えると、月の本数はもっと下がります。
必要売上を本数で割った単価
58万円を60本で割ると、1本あたり9,700円ほど。
開業時のプライベート6,500円では、全部埋まっても届かない数字です。
埋まっているのに苦しかった理由が、この割り算ではっきりしました。
いまの料金は、プライベートが1回9,000円、月4回の会員さんで34,000円です。
1本9,700円には少し届きませんが、定員3名のグループレッスンが1人3,500円なので、3人埋まれば1本10,500円になります。
私のスタジオはプライベートとグループが半々くらい。
ならすと、ちょうど届く計算です。
なお、月額制・回数券・都度払いのどれを軸にするかという話は、それだけで1本書けるので別の記事にします。
ここでは「どの体系でも、1本あたりの単価が逆算した数字を下回らないこと」だけ覚えておいてください。
料金改定で実際にやったこと
計算ができても、値上げを実行するまでに1年半かかりました。
「値上げしたら会員さんが辞める」が怖くて、先延ばしにし続けたんです。
いま振り返ると、この1年半が一番もったいなかったと思います。
実行したのは開業3年目に入るタイミングでした。
やったことは次のとおりです。
- 新規の方は案内した月から新料金にする
- 既存の会員さんは3ヶ月先まで旧料金で据え置く
- 案内は予約システムの一斉送信ではなく、紙で渡して口頭でも一言添える
- 案内文には金額だけでなく、レッスンの質を保つための改定だと理由を書く
据え置きを3ヶ月にしたのは、回数の残っている方の消化と、続けるかどうかを考えてもらう時間のためです。
計算上は即日変えた方が得ですが、そこで削れる信頼の方が高くつくと思いました。
それで辞めた方は、30人ちょっとのうち2人でした。
拍子抜けしました。
退会の理由はいまも記録していますが、多いのは引っ越しと仕事の繁忙で、価格はその次です。
値上げへの恐怖は、実際の退会よりだいぶ大きく見積もられている。
これが私の実感です。
もちろん、値上げした以上はレッスンの中身で応える必要があります。
私は改定と同じ時期に、レッスン後に渡すフィードバックのメモを始めました。
料金を上げる根拠を、自分の側にも作っておきたかったからです。
これから料金を決める方へ
順番だけ間違えないでください。
先に経費と自分の取り分と稼働の上限から単価を逆算して、最後に相場の幅に収まっているかを確認する。
相場から入ると、安い方の数字に引っ張られます。
私はその順番を間違えて、埋まっているのに苦しい1年半を過ごしました。
それと、迷ったときに値下げで解決しようとするのは、やめた方がいいです。
値下げは今日からできますが、戻すには私のように1年半の覚悟が要ります。
いま料金表を作っている方は、ホームページに載せる前に電卓を叩いてみてください。
その単価で月60本埋まったとき、自分の生活費まで残るかどうか。
残らないなら、その料金表はまだ完成していません。